オリジナルEBのヘッド付けられているバンジョー・ペグを考察してみた。今回比較に用いたのは、バンジョーペ グの本家本元のギブソンのバンジョーと、同じくギターでありながらバンジョーペグが使用されているファイアーバードである。 まずはそれぞれのヘッドの外観から。
こちらは裏から見たところ。基本的にはEB-1とファイアーバードとは共通の仕様であることが分かる。実際バン ジョーに用いられているモノとは、ギアヘッドからして大きく異なっていることが分かる。
ヘッド自体の厚みは、それぞれ大きく変わることはないが、ファイアーバードは、トラスロッドカバーが他の機 種とは違いヘッドの先端部分まで伸びているので、その分の厚みは1o程度異なる。
こちらは側面からの画像だが、他のギターなどとは違いバンジョーペグの特徴としてヘッドに直角に柄の部分が 差し込まれているので、ヘッド全体が厚みが有るような印象がある。ファイアーバードは、重い金属製のペグが6基並んでいるた め、ヘッドの重量が増している。
ヘッドからそれぞれのペグを取り外してみたところである。バンジョーはブッシュ自体がネジになっており、ペ グそのものもブッシュによって固定されている。EB-1とファイアーバードはそれぞれヘッド裏からネジ止めされている。ファイア ーバードのは、76年の米国建国200年のアニバーサリーなのでゴールドハードウェアとなっている。それ以外はニッケル仕様。
こちらは横に並べてみたところ。つまみはファイアーバードとEB-1は、同じ形状だが、EB-1の方はプラスチック 製である。この時期のモノは縮まない素材のようだ。バンジョの方はウクレレのように丸みのあるつまみ。これは、同じくバンジ ョーペグが用いられている初期型EB-Oにはこの形状が使われている。
こちらはつまみの方から見たところ。随分印象が違うことが分かる。EB-1とファイアーバードのブッシュの直径 はいずれも10oである。
これはペグを真裏から見たところであるが、EB-1とファイアーバードは、造りが全くと言ってよいほど同じであ る。ネジ穴がややずれてはいるが、代替は可能である。ちなみによく見るとEB-1には、「B」の刻印があり、ファイアーバードに は「T」の刻印がある。何を顕しているのかは不明。
今回比較の対象としたギブソン・バンジョーは、70年代の後期のスチューデント・モデルであったが、上記の画像 にあるように70年代初頭のモデルの中には、EB-1やファイアーバードに用いられているモノと同じペグの使用されているモノがある ことが新たに分かった。
バンジョーペグを取り替えてみた(顛末記)
今回は、オリジナルEB-1のバンジョーペグを現行品に取り替えてみた。パーツについては、現行品といえどもあ くまで純正品に拘ったので、結果として市中の楽器屋を通して山野楽器に修理という形で依頼することとなった。以下は、その顛 末記である。折しも山野楽器は、本家ギブソンとの代理店契約を解消するという衝撃的なニュースを通して、ギブソンユーザーの 間で物議を醸しているが、この修理依頼は、その発表の直前に行ったものである。
ギブソンのパーツは、現行のレギュラー品については、大半のものが別途市販されているが、ヒストリックコレ クションに用いられているものや、レギュラー品であってもファイアバードに使用されているバンジョーペグなどは、かつては市 販されていたが、現在は市販されていない。よってこうしたパーツについては、ギブソンから代理店に対してメンテナンス用の修 理部品として供給されていた。
そのため、市販されているパーツのように現物だけを取り寄せようとしても山野楽器からは、ユーザーに提供さ れないようになっていたのだった。実は、今回の依頼をする前に、最寄りの楽器屋のいくつかにパーツだけを取り寄せようと試み てもらったのだが、すべて失敗に終わったのだった。担当者によっては、一旦はOKを出すものもいたのだが、のちに覆されること となったのであった。
よって、市販されていないパーツを自身の持つ楽器に取り付けたければ、最寄りの楽器屋を通じて修理依頼とい う形で依頼しなければならないのだった。ただ、不思議なことに、この修理依頼は、ギブソン製品であれば、正規輸入品や並行輸 入品、はたまた、かつて市販されていたモデルやいわゆるヴィンテージモデルと言われる旧い製品に至るまで、すべて正規品同様 に修理依頼を受けるという。これは、本家ギブソンが代理店契約を結ぶ際に、ギブソン製品であれば過去に作られたものについて も現行品同様にメンテナンスの対象とするよう求めていたからかもしれない。(このあたりは、想像の域を出ないのだが…。)
さて、前置きはこのぐらいにして、下記の画像は、現行のバンジョーペグをオリジナルEB-1のヘッドに取り付け たところである。
下記の画像は、上記の画像のクローズアップなのだが、ここで右側に取り付けられたペグが当初の取り付け位置 より右にずれていることが分かるだろうか。実は、現行のバンジョーペグは、これまで比較してきたように、昔のものと形は極め て似ているのだが、あくまでファイアーバードのヘッドに取り付け、縦に一直線に並べて使用することを前提に作られており、EB -1の様な左右対称のヘッドに取り付けて使用することを想定して作られてはいない。なので付け位置がすれてしまう。
下記の画像は、ヘッドの表から見たところ。
下記は、取り外してみたところであるが、先に見たように取り付け位置がすれるので、当然ネジ穴もずれてしま う。新たなネジ穴は、元のネジ穴の1o程度横に開いてしまうため、補強も含め、右側の元のネジ穴は充填材料で埋めてあるのが 分かる。たかだかペグを取り付けるだけなのだが、非常に丁寧な仕事がしてあり、専門のリペア・マンが対応していることが伺え る。
次に今回取り付けた現行品とオリジナルペグを比較してみた。
山野楽器がギブソンとの代理店契約を解除してから3月ほど経つが、新たにギブソンの日本法人が立ち上がるな どの噂はあるが、未だ先の見えない状況が続き、日本のギブソン・ユーザーやファンをヤキモキさせている。今回のような新旧を 問わないリペア・サービスを受けられたのは、これが最後だったかもしれない。契約が解除となった今、今後、山野楽器が今回と 同様なサービスを提供することは考えにくく、ある意味ギリギリのチャンスだったとも言えよう。
今回、楽器を修理に出すに当たって、あわよくば、山野楽器の方で、オリジナルEB-1を採寸してもらって、ジャ ック・ブルース・シグネチャーでも企画してくれないかと、淡い期待を持ったのだが、契約解除となって、その夢も露と消えてし まった。ヒストリック・シリーズなどでのオリジナル・レスポールの再現にも多大なる功績があった山野楽器であるが、その秀逸 な企画力が、次のギブソンの代理店(場合によっては直営)にも引き継がれるかどうかが、ファンとしては本当に気になるところ である。
バンジョーペグを取り替えてみた(顛末記)続編
実は、ここでペグを取り替えたことを報告しておきながら、最近まで弦を張ることをしてこなかった。何故か。 ギター用のペグを取り付けたのだから当たり前といえば当たり前なのだが、それは、弦を通すために開けられたペグの穴が細く、 ベース弦を通すことが出来なかったからだ。上記にオリジナルのペグと並べた画像があるが、ここでも明らかなように約1oほど 大きさが違う。ギター用に開けられた口径は2o。ベース弦を通すためには3o径は必要だ。その口径を広げるためのアイテムが ピンバイスだ。画像として掲げたのは、実際に使用した3o径のバイスである。2oと2.5oのピンバイスもセットされている ので、少しずつ径を広げていくことが出来る。
上記の工具を用いてやっと弦が張れる状態になったので、張った弦が下記のヤマハのフラット・ワウンドのショ ート・スケール弦である。これは、ネックにもペグにも負担が少なく、EB-1にとって安価で優れた弦ではないかと思っている。